私は動物が大好き。犬も猫もウサギもライオンも、みんなみんな大好き。
偏見と独断でいうと、動物が大嫌いな人って、どこかヒヤッとつめたいもの持ってるような気がするの。
「動物、好きだけど、死ぬとつらいから飼わない」という人がいます。
なんだかそういう人のほうがやさしそうだけど、私ね、どんなにつらくても、今死にかかってる飢えた子猫を見捨てられない人のほうがもっとやさしいと思う。
子犬や子猫を捨てる人、大々々々キライ。
捨てられた小さい生きものがどんな悲惨な目に会うか知ってるのかしら。もし生きのびても、やれ野良猫だ、野良犬だと忌み嫌われて……。
ゴミをひっかき回し、時に人間をおそうことがあるのは、どうしてだと思います? みんな、おなかが空いているから必死なのです。これ、みんな捨てた人のせい。おなかがぺっちゃんこで、骨がゴツゴツ出てて、毛がさか立ってて、人を信じられなくなった目を持った犬や猫を見るたび、私は涙で目がかすみそうになるのです。
何か食べものをあげたい! と、ほんとに泣きそうになるのです。
ある田舎の売店で、子どもたちとうどんをすすってたら、ぺっちゃんこの白い猫が二匹現われました。
その店はかけうどんと山菜うどんしかなく、私たちはかけうどんを食べていました。あわててみんなでうどんをフーフーいって冷まし、猫たちにやりました。
見てるのもつらいほど、彼らはおなかをすかせていて、ただの白いうどん、うちの猫どもなら見向きもしないただの白いうどんをむさぼり食べました。
「やめてくれませんかね!」すごい形相で売店のおばさん。
「何がですか?」
「そんなもんやるから、このへんうろつくんだよ。まったくこの猫ときたら、つかまえてどんなに遠くへ捨てにいっても山越えてでもヨタヨタ帰ってくるんだからねっ」
チッと舌打ちし、にくにくしげに猫たちを見、私たちを見ます。確かに、この猫たちが売店のまわりをうろつくのは不愉快なのかも知れません。
旅人の同情が迷惑なこともあるでしょう。でも、私は対照的な例にも出会ったことがあるのです。
やはり旅先のある茶店で、ぼてぼてにふとった猫たちが茶店のまわりで日なたぼっこしていて、お客がなでたりするとゴロゴロとのどをならしニャンと愛きょうをふりまいたりしていました。
茶店のあるじに聞くと「みんな捨て猫。かわいそうで、残りものを食べさせ、お客も何かやったりするので、いつのまにかこんなにふとっちゃって、今ではここいらの人気者だわね」と笑って話してくれました。
世の中にはいろんな人がいるけれど、人間にやさしいのはむろんのこと、動物にもやさしい人が好き。
うちの犬は捨て犬交換会(実際には捨てにだけくる人と、もらいにくる人とあって、交換ではない)でもらってきたもの。もう中犬で、誰からも見向きもされず、元の飼い主からは名前もつけられていなかったボロボロのメス犬。
ここで引き取り手のない犬の運命は決まっています。私たち親子は、この犬をカワイイと思うより、カワイソーと思ってもらってしまったのです。いろんな色だらけなので名を「ミケ」。
猫の「ミーナ」は足が一本無く、「ボン太」はしっぽが折れ曲がり、どちらも捨て猫。そしてまた一匹拾いました。
仕事を持ち年子を持ち、年中スイミン不足の目をしばたかせている私にとって、四匹の動物を飼うのはこれでもう限界。結婚する相手への第一条件は動物が好きであることでしたから、夫も子どもも家中が動物好き。
でも、生きものが好きということは、嫌いな人よりずっとつらいこともあり、時折、嫌いに生まれてくれば良かったと思うこともあります。
さて、動物好きの人への贈りものに、“動物クッキー”の作り方をプレゼントしたいんです。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
私のクッキーは、簡単で経済的でおいしくて、そのうえかわいいんだからいうことなし。どうかあなたも動物が大好きな人でありますように。嫌いだったら少しでも好きになってくれますように。
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■ほのぼの動物クッキーの作り方 ※
材料――無塩バター100g 砂糖60g 卵白1個分 小麦粉200g 強力粉適宜 卵黄1個分 水小サジ1
無塩バターを室温でやわらかくし、そこへ砂糖を入れてこねます。
そこに卵白をといてまぜ、小麦粉も振りこんでよくまぜます。やわらかすぎたら冷蔵庫でしばらく冷やし、ちょうどよい感じならそのままで。
台に強力粉少々ふってクッキーだねをおき、上にもパパッと粉をふってめん棒で5ミリくらいにのばします。
のばしたら動物クッキーの型にも少し粉をつけて次々押しつけて型抜きします。
天板にクッキーだねを一枚ずつ並べ、卵黄に水を加えてまぜたものをはけでぬって、あらかじめ180度に温めたオーヴンに入れます。
15〜20分くらいで焼き上り。オーヴントースターでも焼けます。
これは、クリスマスに焼くととてもいいものです。型抜きした時、竹ぐしの太いほうで上のほうにぐりぐりっと穴をあけておきます。焼けたら、穴に糸を通し、クリスマスツリーにぶらさげられます。
※注釈:上の作り方は原本通り、小林カツ代氏が当時(昭和57年)書籍の為に書き下ろした縦書き200字詰め原稿用紙に書いたもの。横書きにはなっておりますが、当時の書籍に忠実に記載させて頂きました。画像をクリックして頂ければいつも通りのレシピも出てまいります。お好きな方をお使いください。
小林カツ代 (1982年復刻掲載)
「こんなとき、こんな料理、こんなお菓子で」