子どもは一般的にいってふりかけ好きだと思うのですが、うちの子たちも好きでした。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
"一発君"というふりかけが幼稚園ではやりましてね。
今から十五、六年も前になるかなァ。
野球選手の形をした可愛い容器に入っていたので、それが人気のモトだったと思うの。
中身はごく普通。
私としては、ふつうの白いごはんは、なるべくそのまま食べさせたかったから、ふりかけ類はごくたまのお楽しみ。
それに、市販のはどうしても味が濃いでしょ。
だからあまり食べさせたくなかったの。
でも"一発くん"を買ってやりました。
まあその喜びようったら。
さてさて、これからこの母は陰謀を企てまする。
まず、彼らが気づかないところでふりかけ一発くんの中身を半分ほど別の容器に移します。
そして大急ぎで自家製ふりかけを作り、すっかりさまし、何くわぬ顔して一発くんの容器に足すのです。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
この時の自家製には味をつけません。
じゃこを使った時は塩味がありますし。
カクテルよろしく容器をサッサッサッとなども振って混ぜまする。
これにて濃い味もかなりうすくなりまする。
ふふふ、次は一発くんの一の字の上にマジックでもう一本短く一を書いて"二発くん"に。
だってェ、メーカーさんに悪いもん。
親心とはいえ自家製まぜもの入りにしちゃったから。
その日の食卓で私。
「うちでは二発くんって呼ぼうね」
「ウン!」
幼い頭がふたつ、にっこにこ、とうなずいた……遠い日。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
小林カツ代
1992年秋 「読むだけで美味しいはなし」
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