カツ代の家庭料理

スパイスレッスン その7

カツ代の家庭料理

クローブ( Clove )


スパイス解説
クローブは、高さ十数メートルにもなるフトモモ科の常緑樹の花の蕾(つぼみ)。青い蕾が開花直前まで成長し、ピンク色に変わりかける頃、ガクごと摘んで乾燥させたものです 乾燥させると赤褐色になります

数多くのスパイスのなかで、花の蕾の部分が用いられるのはクローブだけです 形が釘に似ていることから、フランス語では釘を意味する「Clou(クルウ)」、中国語では釘と同じ発音の「丁」の字を用いて「丁香」、和名も「丁字・丁子」と呼ばれています

クローブの原産地はモルッカ諸島(インドネシア)。4世紀くらいまでにスパイス航路を通ってヨーロッパに持ち込まれたとされています
16世紀以降は、コショウなどと共にスパイス貿易の主要産品となり、激しいスパイス争奪戦の末、東インド諸島の支配権を握ったポルトガル、オランダ、スペインに莫大な利益をもたらしたと言われています

18世紀後半にはフランスやイギリスがモルッカ諸島からクローブの苗木を盗み出し、両国の植民地マダガスカル、ザンジバル(タンザニア)などに移植し、栽培されるようになりました。現在もこれらの国々の他、スリランカ、マレーシア、中国広東省・河南省などで主に生産されています


クローブの魅力は、何といっても強いバニラのような甘さのある芳香と独特の渋みのある刺激的な風味
新鮮なクローブは、茎のところをポキっと折ると、大変香りのよい油分がにじみ出てきます 香りの主成分は Eugenol(オイゲノール)で、化粧品や香水、歯磨き粉、口内清涼剤、ガムや酒類にも用いられ、消炎・抗菌作用、鎮痛作用などもあるとされています

中医薬膳では、クローブは温裏散寒薬に分類されています。体の裏(中)を温めて冷えを取る役割をするという意味です
 冷えて働きの弱った胃腸を温めて活発するとされ、食欲不振、吐き気、胃痛などに使われてきました。また、腎を温めて体を元気にする強壮作用もあるとされています

古くから生薬として用いられてきたことは書物にも記録が残っており、中国漢代、臣下が皇帝に拝謁するときにはクローブを含んで口内を清めていたことが記されています


インドでも同様に、古くから健胃、消化促進、口内殺菌などの効能があるとされ、歯茎の痛みなどには粒ごと噛んで使われてきたそうです。古代エジプトではミイラをつくるときに、シナモンなどと共にクローブが用いられました


クローブは日本にも早くから渡来し、東大寺正倉院の御物の中にも帳外品として納められています
 当時は主として薫香や染物などに用いられていたようです

江戸時代になると、女性が日本髪をなでつけるときに使う“鬢付(びんづけ)油”にクローブの精油が使われていたとか
 女性の髪からほのかに甘くスパイシーな香りがしたとすると、ちょっと素敵ですね

またウスターソースやケチャップにもクローブの香りが活かされていたり、漢方系の胃腸薬の成分にも含まれています。クローブ、どうやら日本人には縁の深いスパイスなのですね

クローブにはパウダータイプとホールタイプがあります。ホールタイプのクローブは、そのまま豚肉や鶏肉、玉ねぎなどに刺して煮込み料理に使ったり、ピクルス、肉のマリネ液、魚料理の風味づけ、紅茶やカクテル、ウイスキーにもおすすめ、インドのチャイにも欠かせぬスパイスです
 パウダータイプは挽き肉料理やパン生地に混ぜたり、果物を混ぜ込んだ焼き菓子に加えれば、甘いバニラの香りがふわりと漂います

ホールタイプは、スーパーのスパイスコーナーの棚にいつでも並んでいるわけではないのが残念ですが、そのような場合は製菓材料店やインターネットなどで入手することができます


クローブの甘い香りと、ピリッとした刺激のある味を上手に活かすため、入れ過ぎにはご注意くださいね
 また、精油成分を多く含むクローブは45〜50度くらいがいちばん風味が浸出しやすいので、煮込み料理に使うときは沸騰するより前、少し早めに加えることがポイントです

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クローブを使ったレシピ
カッスーレ
カツ代の家庭料理
鶏もも肉にクローブをプチプチ差し込んで煮込みます。野菜もたっぷり入った、フランスのおばあちゃんの田舎豆料理です


ロマネスコのピクルス
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ロマネスコは、ローマのカリフラワーに由来する名前です。形状の美しさに見惚れながら、ほのかに沁みたクローブ風味を味わってくださいな


焼きミートボール&ベリーソース
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ミートボールにベリーのソース スウェーデンではもっともポピュラーな食べ方です。挽き肉料理にはパウダータイプのクローブがよく合います


牛すじの簡単シチュー
カツ代の家庭料理
フワッと香る、この匂いはなあにクローブとシナモンです 牛すじが準備できないときは、牛切り落とし肉でも美味しくできますよ

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お や つ
干し柿とクローブのマフィン
カツ代の家庭料理
クローブは果物を混ぜ込んだ焼き菓子に使うと甘いバニラの香りとピリッとした風味が活きてきます お菓子にはパウダータイプのクローブが使いやすいですね。初めは少しずつ、ほのかに香る程度に焼いてみてください

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の み も の
ホットウイスキー・トディ
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ほっとひと息つきたい、そんな夜に、こんなお酒はいかがでしょう シナモンとクローブの甘い香りと心地よい刺激が心をゆるりとほぐしてくれます

お ま け コ ラ ム
→ フルーツポマンダー
(スパイスの匂い玉)




冬のスパイスレッスン

  ◆1週目 生姜
  ◆2週目 シナモン
  ◆3週目 唐辛子
  ◆4週目 胡椒
  ◆5週目 スターアニス
  ◆6週目 ターメリック
  ◆7週目 クローブ



コ ラ ム

冷えとスパイス

スパイスを中心に見た歴史



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