KATSUYOレシピ

静かな、あるいは、賑やかなクリスマスの夜に

 十二月っていいですねえ。新しい月がくる毎に、いいとか好きとか嫌いとか、私はちとうるさいですが、せっかく四季のある日本にいるんですもの、月が変わる毎、季節が変わる毎いろんな受けとめ方をして楽しんでおります。

 なぜ十二月がいいかというと、まずクリスマスがあり、暮れのあわただしい雰囲気があります。ほんとに一年が過ぎた、去っていくという何かいい知れぬものがあるでしょう。

 クリスマスが近づくと、どこへ行っても「ジングルベル」と「聖しこの夜」の音楽が鳴りひびきます。

 それに、イヴともなると、どの人も家路を急ぎ、手にはクリスマスケーキがしっかとにぎられていて……まったく一億総クリスチャンになったかと思う位、クリスマスを祝う人の多い日本です。

 私はね、クリスチャンです。びっくりされるだろうけど、ちゃんと洗礼も受けたクリスチャン。幼い頃読んだ聖書物語の影響大。

 カトリックのカチカチの中学、高校にいる時は洗礼のセの字も浮かばず、だから、上の学校へ行くときは底ぬけに明るくて自由な学校を選びました。その頃のクリスマスは学生パーティで、踊ることが何より楽しかったです。

 でもね、教育って恐ろしいですよ。

 カチカチで、ああいやだいやだこんな固苦しい学校はと、六年間思い暮らしていたのに、そこで受けた教えは体の中までしみついているみたい。高校を出た後も、教会だけは好きで、なんとなく足は運んでいましたもの。といっても、受洗しようとまでは思わなかったです。ずーっと長い間。

 結婚し、子どもが生まれ、けっこう人並みに楽しいクリスマスを過していたある年、毎年クリスマスカードをくれる友の、何気ない一文がなぜかガーンと胸にきたのです。

「今年もいつもと同じクリスマス。ケーキを焼き、ごちそうを作り、夫と子どもたちとそろって教会のミサに行きます」……と。

 友は、敬虔な、ほんとのクリスチャン。だから、ごく当り前のことを書いたにすぎません。その頃の私は、子育てと仕事に忙しく、教会へはとんとごぶさたしていました。

 夫とまだ二人だった頃は、降りしきる雪の中を、白い息を吐きながら、坂の上にある教会へ、深夜のミサを受けに行ったこともありました。でもその時の私は、教会の雰囲気が好きというだけ。夫につきそってもらい、夜明けの坂道を、ミサを受けて下りてくるロマンティックさに酔っていただけの、若い心のクリスマスでした。

 だから、子育てが忙しくなり、仕事が忙しくなり、友人たちを呼んでワイワイ騒ぐクリスマスは出来ても、教会へ行こうという思いはなくて、とにかくみんなで楽しくやっていたのです。それなのに、

“なんて素晴らしいクリスマス、これがほんとだな、うらやましいな”

 と、ふーっと淋しくなりました。彼女は今どき珍しい子沢山、一人一人の衿もとを直し、マフラーを巻きつけてやりながら、寒いねーといい合ったりして教会へ急ぐであろう姿が目に浮かびました。

 ただし、この時のガーンがきっかけで受洗したのではありません。それからまた長い年月を経て、ある年のクリスマスに、私は突如として洗礼を受けたのです。突発性受洗です。

 それ以来、私もいつのまにかあの頃の彼女と同じくわが子たちのオーバーの衿をたて、マフラーを巻きつけてやりながら、イヴには教会へと急ぐ身になりました。

 でも、友達を呼んでわいわい騒ぐのも変らずやっておりますよ。その時はいつも“七面鳥のロースト”が中心、私が焼くのはどこよりもおいしいといわれるのをまともに受けて、喜んで毎年焼くのです。

撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO

 それとは別に、家族だけとの静かな(ただし、憧れ。今はチビが賑やか)クリスマスも祝います。この時の料理はいつも“ホワイト・シチュー”です。

 なぜクリスマスにホワイト・シチューを作るかといいますとね、まだ若かった私たち夫婦が、深夜のミサを終えて坂道をおりる途中に、たった一軒だけ、夜明けというのに開いている小さい小さいレストランがありました。そこで、二人はいつもホワイト・シチューを食べたんです。

 白みゆく冬の空とクリスマスの朝……ホワイト・シチューはとても似合っていたし、限りなくおいしかったから……。

撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO

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■ホワイト・シチューの作り方 ※

材料――牛肉又は豚肉(脂の少ないところ)400〜500g 水4〜5カップ 塩小さじ1/2 固型ブイヨン1個 人参、じゃがいも、かぶなど適宜 玉ネギ1/2個 バター大サジ1 小麦粉大サジ4〜5 塩 コショウ 生クリーム 牛乳 パセリ(みじん切り)

 牛又は豚肉は2〜3センチの角切りにします。

 湯をわかし、そこへ肉と塩小サジ1/2と固型ブイヨンを加えて弱火で1.5時間、途中で同じく角切りの人参やじゃがいも、かぶなどを加え、時々アクをすくいながらコトコトと煮ます。

 シチューなべでみじん切りの玉ネギをバターで炒めて小麦粉を入れ、こがさぬよう炒めて肉の煮汁でのばします。よくまざったら肉と野菜を加え、少し煮て塩コショウを補います。

 牛乳を好きなだけ加えます。生クリームがあれば大サジ1〜2杯ほど加えるとコクが出てレストラン風。

 器に盛ってパセリぱらぱら、緑あざやか。

■七面鳥のローストの作り方 ※

 もし大勢人を招いたら、いっそ七面鳥といきますか。食べごたえがあるし、何より豪勢な感じが出ます。

材料――七面鳥一羽(デパートや大きなスーパーマーケットで冷凍されたものが売っている。冷凍のものは、冷蔵庫に移してから解凍に二晩くらいかかることもあります。)

 レバーは冷凍食品だと一緒についてます。もし解凍したものを買うとき、必ずレバーをつけてもらうこと。

中につめるものは、さつまいも 玉ネギ セロリ 人参 パセリ にんにく レバー

 ふつうは栗などつめますが、さつまいもをつめるのは私の発明ヒット作。

 七面鳥はレモンを二つ切りにしてよくこすりつけ、次に塩とコショウを肉にもみこむように手で。腹の中はよくふいてから同じように。

 塩をなじませている間に中身を作ります。

 さつまいもは皮を厚くむいて1.5センチ角に切り、やっとくしが通るくらいにゆでます。

 バターをたっぷりとかし、みじん切りにした野菜を炒め、次にきれいに洗ったレバーを炒めて塩コショウし、芋を加えて更によく炒めます。ブランディー少々加えて火をとめ、パンも加えてよくまぜます。

 これを鳥におしりのほうから八分目つめる。首を中に入れこむようにして木綿糸でぬいます。おしりもぬいます。手羽と胴をくっつけるようにして金ぐしをさします。

 オーヴンは約300度にセットし、胸を上にして焼きますが、オーヴンのふたをしめたらすぐに180度に温度をさげ、二時間は焼かなくてはなりません。時々とかしバターをはけでぬったり、出てきた肉汁をかけたりします。くしをさしてみてきれいな汁が出たら焼き上りです。足に紙かざりをしていざ食卓へ!


 ※注釈:上の作り方は原本通り、小林カツ代氏が当時(昭和57年)書籍の為に書き下ろした縦書き200字詰め原稿用紙に書いたもの。横書きにはなっておりますが、当時の書籍に忠実に記載させて頂きました。画像をクリックして頂ければいつも通りのレシピも出てまいります。お好きな方をお使いください。

小林カツ代 (1982年復刻掲載)
「こんなとき、こんな料理、こんなお菓子で」


本格クリームシチュー
ほっと温まる、クリーミィなやさしい味。

骨付きチキンの和風グリル
オーブンで簡単!ジューシーなもも肉を丸かじり!


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2020/04/19

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