“鯛大根”“鯛のアラ煮”“鯛とゴボウの煮つけ”
う〜、どれもごっつうおいしい!
よくこんなこというでしょ。外国で豚の頭が売られているのを見ると、日本人は驚いたり気味悪がったりするけれど、日本だって、鯛の頭を平気で食べてて外国人はびっくりするって。
そうかなァ、私、やっぱりぜったい違う気がする。牛の頭や豚の頭がどでん、と売られているのと、鯛の頭がどん、と売られているのとでは。牛や豚はせっせと人間が食べるくせに、魚よりはずっと近しい関係にあるもん。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
鯛の頭より活け造りのほうが私はよっぽど弱い。鯛の頭と大根やごぼうをじっくり煮たのは「ここまできちっと食べないとバチがあたる」という気持ち。それが、こんなにおいしい味を作り出してくれるんでしょうねえ。
魚の目がコワイという人、ほんとに気の毒。別にその人のせいじゃないでしょうに、こんなにおいしい鯛の頭が食べられないんですもの。
ただし、腐っても鯛、なんていうのは嘘。アラでも頭でも、新鮮が何より。炊くと身がはじけて、見栄えは落ちるけどやっぱり鮮度優先。大根やごぼうと煮るのは先人の知恵。どちらもよい味を出しあって、ごはんにもぴたっと合うすばらしい出合いもの。
小林カツ代 (1993年復刻掲載)
「小林カツ代の読むだけで美味しいはなし」