連載3
私が結婚した年の夏、ある夜、親友のトモミから電話がありました。短大、その上の専攻科と三年間、一緒に学んだ(遊んだ)トモミ。なんだか緊迫した声!
「もしもし、もしもし、カツ代?私、駆け落ちしてきたの!」
「えーっ、誰と!?」
「あの彼にきまってるやん」。
当時、私は夫の転勤で、新居は名古屋でした。つまり、彼女たちは名古屋に来てる!?
「うん、今、駅前。すぐ迎えに来てー」
「あ、あ、うん」とは答えたものの、その夜、夫の同僚たちが五〜六人遊びに来ていて、夕食まっさい中だったのです。
とにかくもうめちゃくちゃ急いで、予定の料理をつくり、いっぺんに出しました。
同僚たちは歓声をあげてくれましたが、まさかほんとのことは言えず
「すみませーん、友人が突然きちゃって……」。
夫にはこそこそと話し、そそくさと出かけました。私の頭の中は??だらけ。
駅に着くと、長身の彼と、トモミがにこにこ。
こっちはタクシーを飛ばし、息せき切って飛んで来たというのにィ。
「父がね、私たちのこと大反対なのよォ」。
私と同じく彼女21才、学校出たばかり。彼19才、浪人生。親の身になれば反対するよなァ。
今夜泊めてね、帰りの交通費は持ってるからと言うけれど、駆け落ちってそのままどっかへ行っちゃうんじゃないの?
帰るって、また大阪へ帰るの?ならば、駆け落ちにならないじゃない?
などなどの疑問にトモミの答えは明解。
「父に置き手紙してきたから、びっくりして、なんでも許してくれるわよ!」。
ま、後日その通りにはなったけど……。さて、家に着くと、夫はプンプンの顔。
同僚たちが、私の帰りをずいぶん待ってたそうな。山のような洗いものを夫は一人でしたそうな。
トモミたち、おなかペコペコだって。
しかし、もううちにはなにも残ってない。あるのはサラダに使ったあと、捨てようと思ってたレタスの固い部分と、買いおきのもの少し。
で、レタスの芯も大事に洗い直し、にんじんとたまねぎ千切り入りのサラダ、ミルクとクリームコーンでスープ。あとは、翌朝用の食パン。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
食べた、食べた、トーストにした8枚切りを全部!
3人の子の母になったトモミはあの時のサラダのおいしさは忘れられないと、今でもよく言ってくれます。
よーく見てください。あの日のサラダを忠実に再現しましたから。
うふふ、芯がいっぱい、でしょ?
小林カツ代
出典:NHK きょうの料理 2004年6月号
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ありものサラダ
いざというときに、この配合さえあれば、サラダはなんでもござれ〜♪
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