三五八漬と書いて、サンビャクゴジュウハチ漬けなんて読んで下さるな。
これはサゴハチ漬けというのであります。なんてえらそうなこといってますが全て受けうりですけど。
さてこの、三五八漬なるもの、山形とか福島の読者ならご存知の方も多いことでしょう。それらの土地に昔から伝わるお漬けものと聞きましたから。
これを私にごちそうしてくれたのはつい最近友人になったワコさん。彼女は私の親しい人のそのまた友人だったのですがひょんなことから仲良くなり、家までのこのこ遊びに出かけて夕食まで頂いてまいりました。
聡明な女は料理がうまいとはまさしくそう、人形作家であり妻であり一児の母である彼女の手になる料理はすべておいしく、四歳のわが息子なんぞワコさんの焼いた食パンを三枚もたてつづけにたいらげ、シチューパクパク、三五八ボリボリ。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
ワコさんは山形出身。三五八漬はお母さんから教わったものとか。ナタでわったように荒く切ったきゅうりの三五八漬はさっぱりとしたとてもいい味でした。
そこで根ほり葉ほり製法を聞いてきた次第。
もっとも漬けものそのものは別に真新しいわけでなく、いわゆるこうじ漬けなのですが、私など「さあこうじ漬けをつくるぞ!」とさわぎして作り、「大変な思いをして作ったのに食べるのがはやすぎる」とブツクサ。
ところが三五八漬という名の面白さと由来を聞いたとたん、すごく簡単に思えてきたのです。
三が塩、五がごはん、八がこうじ、これを時々よくかきまぜておくとおいしい床が出来るとのこと。
発酵してきていい香りになってきたら小出しにして即席漬けの容器などできゆうりや大根をからめて押しをすればいいんです。
その際きゅうりや大根は大きめにぶつぶつ切っておいた方が漬かりが早いし床も少なくてすみます。一夜漬けでもいいし、夜食べるのなら朝漬けてもおいしい。
べったら漬けなんてほんとのなら一本何百円もするのが自家製でほいほい。
太めの大根だったらたてにいくつかに切ってからよくなれた三五八に漬けこんで重石をしておけば何日かたつとべったら漬けの出来上り。
一度使った床(三五八)は水っぽくなっているので使いませんが、別にとってある新しいものには時々塩やこうじや残りごはんを足してよくならしておくといつまででも保ちます。
そのころはもう三五八、とはっきりしていなくても大体のところで結構おいしくなっていくらしい。とはいってもこのところごはんがよく残るからとやたらに放りこんでは三五漬けになって味が落ちるのは必定。
これから暖かくなってきますから、今作っておくと、すぐおいしい三五八漬が食べられます。このお漬けもののいい点は洋風の食事の時でもよく合うこと。
お酒のさかなにいいこと。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
私はかぶらずしが大好きなのですが(すしというのは名称で実際はいわゆるすしではなく、かぶに塩さけやぶりをはさんでこうじに漬けこんだもの)、手がかかるのでおっくうだったのですが三五八漬を覚えたのでこんどはこの床でかぶらずしを作ってみるつもり。
そうそ、ワコさんの話では暑くなったら出てくる小なす、あれを丸のまま漬けこむと実においしいそうです。(辛子を入れれば辛子漬けになる)。
というわけで目下三五八漬にぞっこん。思えば私も単純な人間ですなあ。
小林カツ代 (1976年復刻掲載)
「お料理ショート・ショート」
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ぬかみそ漬け
その日の気候や湿度により、漬かり具合が違うのがいい。いいタイミングで食べよう!!
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昆布カクヤ
漬かりすぎた、ちょっとすっぱい漬物なんかは、こんな風にしてたべましょ。
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