私ね、とてもおかしなくせ(いや、こんなのくせとはいわないかな)があって、例えば今夜はとんかつにしようと思うでしょ、そうするとつけ合わせが必ずキャベツであるように、とんかつの時の汁物は必ずといっていいくらい、貝のおみそ汁でなくっちゃいけません。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
他にも、貝のおみそ汁を必ずつけるのはポテトコロッケの時。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
この場合、もっとおかしなことは、コロッケがおかずの際はどういうわけかいつもごはんの上に海苔のつくだ煮をのっけて食べるんです。
私のつくるポテトコロッケには練乳を少々入れるという秘密があって、とても好評なのですが、どんなにおいしく出来ても、海苔のつくだ煮を切らした時は何か気が抜けたように思うのですからふしぎです。
きっとずっと以前にコロッケを作った時、たまたま海苔のつくだ煮があって、ごはんにのっけて食べたのでしょう。
その時きっととってもおいしく感じたのでそれ以来コロッケがおかずの時は、ごはんに海苔のつくだ煮をのっけて食べるなんて、妙な習慣が出来たに違いありません。
他には、五目ずしの時は茶わん蒸しとぬたと決まっているし、栗ごはんにはぜったいにとりの唐揚げをおかずに作ります。
撮影:添田明也 スタイリング:チームKATSUYO
おすしに茶わん蒸しといえばありきたりですが、栗ごはんになんでとりの唐揚げが出てくるのかとお思いでしょう。これには少しわけがあるのです。
下の子を出産した日の病院の食事が栗ごはんだったのです。
正確にいうと、出産する少し前の陣痛の起こりつつある時のお昼に出てきたものです。
(こんな手のかかるものを、大勢の人につくるのはさぞ大変だったでしょうに)とちょっとびっくりしました。
そろそろ痛みがきつくなってきていたのですが、あまりにおいしそうだったので口へ入れました。
栗もいっぱい入っていて、実においしいごはんでした。その時のおかずがとりの唐揚げだったのです。
他のは忘れましたが、これだけははっきり覚えています。唐揚げも食べてみました。
おどろいたことに栗ごはんにとてもよく合って、淡白な栗と、油気のある唐揚げはどちらも味のひきたて役でした。
でも、ほんとに残念なことに、栗ごはんは二口か三口、とりの唐揚げはひとかけを食べただけで、急に強くなった痛みで、はしを置いてしまいました。
こんなに手のかかった、おいしく作られたものを残すなんて、作った人の気持ちを考えるとほんとに残念で、しのびがたい思いで、いまも忘れることが出来ません。
そんなわけで、以来栗ごはんにはとりの唐揚げという次第です。
炊きこみごはんの時はほうれん草のごまよごしと塩鮭の焼いたもの、それから大根おろし。
グレイビーソースやトマトソースで煮込む料理の時は必ずベークドポテトを山程作ります。
これなどはまあふつうの料理の常道といえますが、もっともおかしなことは、おやつにホットケーキを食べる時は別にどうということもないのに、日曜の朝たまにホットケーキでもと思う時は、ぜったいにキャベツの油炒め(それも菜っぱのままの大きさで)が食べたくなるのです。
これもちゃんと理由があって、何年か前に暮しの手帳に出ていたホットケーキとキャベツの油炒めの写真を見てうわァおいしそう!と思った(なんでまたキャベツごときにそう感激したかは分かりませぬ)のが始まり。
つまり、オリジナルにせよ物真似にせよ、味の相性の発見は面白く、少々変てこりんでも、ますます探究心旺盛ゆえ、読者諸嬢にもその種のことあらばぜひお知らせ乞う。
小林カツ代
「お料理ショート・ショート」
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コロッケ
ポイントは練乳。じゃが芋本来の味がましてしっとり。
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